松村麻央/知能機械システム工学科2年
9月15日、私は初めてのドイツへと旅立った。航空会社はシンガポール航空。CAは紺色のサロンケバヤという民族衣装を制服として着用しているようで、美しい着こなしが忘れられない。時間にして、約丸一日かけた長時間のフライトは想像よりも疲れるものだった。
初日は、朝の5:30にドイツ入国、気温は5度。夏真っ盛りの日本からずっと同じ格好でいる為、寒さに震えた。ミュンヘン空港からは地下鉄で移動し、ミュンヘン中央駅、TheresienstraBe駅と乗り継ぎ、ホテルKoenigswashe Munichのあるテレジアン通りまで。日本では見られない、カラフルだが統一された町並みに心躍る。早朝に到着した為、18:30集合のコアスケジュール開始までは大分時間があった。せっかくの空き時間なのでミュンヘンの町を堪能する。
ミュンヘンの町
新市庁舎は丁度お昼時ということもあって、12:00にGlockenspielを見ることができた。10分間の華麗なダンスや演奏はとても素敵で、終わった直後には拍手喝采が巻き起こった。18:30には参加者全員が揃い、ご飯を食べにRatskellerへ。初の黒ビールを飲む。日本のビールとはぜんぜん違い、えぐ味のようなものがない。ドイツ人がビールを水のように飲む理由が少しわかった気がする。
二日目、この日からコアスケジュールが本格的に始まる。8:40にホテルを出発し、ミュンヘン工科大学(TUM)へ。始めに、TUMの紹介を聞く。この時点で私はひどく肩を落とすことになる。英語が苦手な私だが、ここまで聞き取れないとは思っていなかった。せめて何か知っている単語が聞こえてこないかと耳を研ぎ澄ますが、更に撃沈。この日は、研究室の見学もさせてもらい学生の行っている研究を紹介してもらった。耳から入ってくる内容はさっぱりな私だったが、目から入ってくる内容だけでも面白い実験を行っていることは十分に分かった。バスケットボールをつくアームロボットや人型のロボットiuroは、見ているだけでワクワクドキドキさせられた。TUMでBock教授が日本語を話せるという点は私にとって救いだった。建築学についてだった。ロボティクスと建築学が融合したような内容だった。私の凝り固まった思考では建築とロボットの関係は重機みたいな物しか思い浮かばないが、人が暮らす空間とロボットを合せるというような話にはとても興味を惹かれた。
昼からはドイツとバイエルンの歴史を谷村さんにレクチャーしていただいた。とても面白い人で、真面目に歴史を話しているのかと思いきや、ちょこちょこと間に小話を挟んでくるのだ。その話がまた面白く、思わず笑ってしまった。
研究紹介の様子
市内探訪
三日目、シーメンス研究所に訪問した。日本でも有名な会社だ。ここでは書ききれないくらいたくさんの研究紹介を聞いた。LEDだったり画像処理技術だったりX線技術だったり、こんな事ができるのかと思わせられる技術で溢れていた。総合テクノロジーカンパニーと言うだけあって、多種多様な研究が行われていた。シーメンスの後はそのまま自由解散となり、私はBMW博物館へ行くことにした。博物館のすぐ近くには本社があり、間近で見るBMW本社ビルはカッコイイ?現代的なかわった建物という印象だ。博物館内の車やバイク、エンジンはどれも見た目が素敵だ。日本人からすればBMWの車は燃費が悪い印象なんじゃないかと思う。大抵の日本人が性能重視であるのに対して、大抵のドイツ人は見た目重視なんだろうか?と思った。
BMW本社ビル
四日目、ボンへの移動日でもあるこの日まで天気はずっと良好だった。ドイツの朝は冷えるが日が昇ってくると一気に暖かくなる。しかし緯度が北海道の北端と同じというだけあって、香川県と比べるとかなり寒い。10:00にホテルを出発し、鉄道を1度乗り継いでボンへ向かう。ライン川沿いを走る電車だった。川沿いには古い城が沢山見えたが、私が見たかったローレライは残念ながらよく分からなかった。
五日目、Bonn-Rhein-Sieg大学を訪問。大学の紹介と先生達の発表の後、私たちの発表を行った。私は日本のカルチャーを紹介する担当だったが、振り返ってみると、緊張で喋りがたどたどしくなっていたように思う。自分の英語能力の乏しさを思い知った。現地の学生は皆フレンドリーで気さくな方たちだった。外国では珍しいのか、折り紙を教えてあげたりもした。
Bonn-Rhein-Sieg大学ではアームが付いているロボットを紹介してもらった。名前は「ジェニー」。ジェニーに指示を言うと、指示通りに動く。お手伝いロボットのようなイメージだ。
ジェニー
六日目の日程は、Fraunhofer研究所、ケルン大聖堂、チョコレート工場見学だ。Fraunhofer研究所では、センサー技術を多用したものを説明してもらったが、専門的な知識がないと難しい内容であった。研究内容としては、宇宙のデブリをセンサーで認知したり、上空から山の高低差を測ることができる、というような内容だったと思う。丸いドームは電波を受け取るものらしい。どういう風に使用されているのかは分からなかったが、中に入ってみると、巨大な設備だった。
Fraunhofer研究所を出、午後からは自由行動という形になった。鉄道で移動し、ケルン中央駅へ。ケルン中央駅を出ると、目の前にはケルン大聖堂がそびえ立っていた。
ケルン大聖堂
礼拝堂へは無料で入れるようになっていた。ケルン大聖堂がスケジュールに組み込まれることになってから、少し調べていたのだが「バイエルンの窓」という美しいステンドグラスがある事を知り、実際礼拝堂の中で見ることができた。外の光が淡く差し込むステンドグラスはとても美しかった。ステンドグラスの絵は、聖母マリアと三博士、羊飼いといった絵でキリスト教の信仰が深いことがわかる。七日目の朝、コアスケジュールはここで終了した。
協定校訪問を終えて、私の英語能力は何ら変わっていない。しかし心境の変化は大きい。焦り、危機感、対抗心。この旅で得たものは数えきれないくらいあるだろう。ドイツに行ってひしひしと感じたことがある。ドイツの学生の学業に対する意識の高さだ。好きな勉強、好きな研究、彼らを見ていると何もかもが楽しそうだ。どうしようもない焦りを感じた。さらに私も負けていられないと対抗心がふつふつ湧いた。英語はもちろん頑張りたいが、私はこれから自分が学んでいくだろう専門的な知識に、もっと興味関心を持ちたい。持たなければならないと思っている。