野坂真也/安全システム建設工学科4年
はじめに
「行ってよかった」 そう思える協定校訪問プログラムであった。数年前から海外の雰囲気を感じたい、異なる文化をもつ同世代の人たちと交流を図りたいと思っていたが、いざとなると計画できず、このまま大学生活が終わるのだろうなと思っていた。そんな中、幸いにも就職活動が早めに終わり、学生最後の年にこのプログラムに参加することができた。知り合いも誰もいないなか参加するのは少し悩んだが、旅程を終えた今考えると、なんとしょうもない事で迷っていたのだと感じた。
●出発~初日(8月30日~9月1日)
自分はコアスケジュールの前に2泊ほどストックホルムに前泊し、観光をした。初めての北欧。昔から残るその美しい街並みと、水に囲まれ整えられたその風景に圧倒され、移動の疲れなど感じないくらい興奮し、遅くまで外を歩いていたのを覚えている。サマータイム中で日が長かったが、夕暮れ時の風景がとてもきれいで、ずっと眺めていたのが最も印象深い。
市庁舎から眺めるストックホルム旧市街周辺
●9月2日(コアスケジュール2日目)
前日に、訪問団のメンバーとヨーテボリにて合流し、この日はデンソースウェーデン訪問とVOLVOミュージアムに行った。デンソースウェーデンは、多くの有名自動車メーカーが存在するヨーロッパで、独自の自動車製品を研究しておられ、概要の説明を受けてから、衝突防止支援自動ブレーキシステムが搭載された自動車に試乗させてもらえた。開発途中で、まだまだ解決しなければならない問題はあるそうなのだが、その中でも研究者の方々は、楽しくいきいきと研究をしておられるように感じた。VOLVOミュージアムでは、そこまで自分は車に詳しいわけではなかったが、その歴史とVOLVO独特の車のフォルムに魅了され、将来、VOLVOの車に乗ろうと心に決めた瞬間だった。
デンソースウェーデンのエンジニアたちと
●9月3日(コアスケジュール3日目)
この日は、ハルムスタッド大学にて、現地の学生と交流を行った。今回の協定校訪問のメインともいえる学生交流(JAPAN DAY)に向けて、協定校訪問への参加が決まってから数ヶ月の間、日本を感じてもらえるような催し物や、自学科の紹介プレゼンの練習などを行ってきた。結果、プレゼンについては、完璧とまではいかないが納得できる形で発表できたと思う。JAPAN DAY企画については、習字や折り紙等を通して積極的な交流を試みることもでき、相手からも好感触を感じとれ、自分的には理想の交流ができた。中でも、習字があんなにも興味を引くものとは思わなかった。
現地の学生と当て字で名前を書いた
●9月4日(コアスケジュール4日目)
この日は、ハルムスタッド大学の施設と研究室を案内していただいた。特に印象に残ったことは、学生たちの多くが、昼休みや休憩時間を日差しの当たる外で過ごしていることだ。事務の方に聞いてみると、一年を通して日照時間が少ないスウェーデンにおいて、学生に限らず多くの人々が陽に当たる時間を大事にしていると聞いた。研究施設なども見たが、何気ないこの風景に、日本では意識することないようなものを感じとることができ、とても印象に残っている。
大学内の昼休みの風景
●9月5日(コアスケジュール5日目)
この日はデンマークのヘルシンゴーを観光した。この街は、スウェーデンと海を挟んで数キロほどしか離れていないため、フェリーに乗って行くことができ、世界遺産であるクロンボー城や近辺の街を観光した。街歩きの中で、同じ北欧でも民家などの壁の色合いなどがスウェーデンとは微妙に異なっており、雰囲気が違うと感じた。また、デンマークに限らずスウェーデンにおいても建築物には窓が多く、更に白い窓枠が多いのが目立つ。伺った話によると、これも、少しでも多く日光を取り入れようとする北欧の文化の一つだということを学び、日本とは違う風土?気候のなかで発達してきた根強い文化を感じた。
ヘルシンゴーの建築物
●9月6日(コアスケジュール6日目)
大学のあるハルムスタッドからヨーテボリに戻り、翌日は解散だったため、実質的にはこの日がコアスケジュールの最終日となった。一日中自由行動だったので、ヨーテボリ市内で街歩きと買い物を行った。ヨーテボリにも計三泊したため、すこし町の中心部から外れた郊外から、お店が集まる中心部まで行くことができ、街を十分に楽しむことができた。また、コアスケジュール中は毎日のようにスーパーの、日本でいう惣菜みたいなものを買って晩御飯を食べていた。好きな物を取って量り売りの仕組みなのだが、個人的には生ハムがおいしく、毎日生ハムとビールとパンを買って食べた。
ある日の夕食
●9月7日~15日(コアスケジュール最終日~個人旅行)
9月7日は朝、ヨーテボリのホテルで協定校訪問団は解散し、そこからは個人旅行を楽しんだ。自分達のグループはこの日からデンマークに移動し、2泊して観光した後、ドイツに移動して6泊して観光した。スウェーデンとはまた違った街並みや、気質の違いなどを感じ取ることができ、一回の旅行で三ヵ国をまたいで旅行する楽しさを知った。今回の旅行ではデンマーク、ドイツも非常にきれいな街だったのだが、個人的にはやはりスウェーデンの街が一番気に入った。
最後に
コアスケジュール7泊と個人旅行9泊を経験して、本当にたくさんの事を学び、多くのことを感じ取ることができた。自分は建設学科専攻であり、海外のインフラなどにも興味を持ってこのプログラムに参加したのだが、「日本は進んでいる国だ」とか「日本が一番いい国だ」という自分の中の勝手な概念が覆された。確かに、多くの場面で日本の方が便利だとか優れているような部分は多々あった。しかしそれ以上に、景観が整えられた街作りや、街中に多くある美しい公園や広場、そしてそこで子供からお年寄りまで各々が自分の時間を好きに過ごす様子を見て、「便利さ」以上に大切な事を北欧やドイツの人々は大事にしているように感じた。この旅行で感じた多くの感覚を、今後長い時間を生きていく中で思い出していきたい。また、この協定校訪問に参加するにあたって、事前準備の段階から引率までお世話になった先生方、事務の方々、個人旅行まで同行してくれた学生のみなさん、卒論中間発表直前にも関わらず送り出してくださった長谷川研究室の皆様など、多くの方々に感謝したいと思います。