神野正彦教授、KDDI総合研究所らと共同で世界初の大規模空間多重光ネットワーク実証に成功
?神野正彦教授は、KDDI総合研究所、日本電気、santec AOC、古河電気工業と共同で、大規模な空間多重光ネットワークの実現に必要な基盤技術を確立し、空間クロスコネクト装置とマルチコアファイバ光増幅器からなる1,000 km級の大規模な空間多重光ネットワークの実証実験に世界で初めて成功しました。これにより、次世代(Beyond 5G (6G))無線通信サービスの提供に不可欠な、経済的で超大容量の光ネットワークの実現に向けた扉が大きく開かれるものと期待されます。本成果の一部は、2025年3月30日から4月3日にかけて米国サンフランシスコにて開催される光ファイバ通信国際会議(Optical Fiber Communication Conference 2025)にて、発表する予定です。
?なお、本研究開発は、情報通信研究機構(NICT)の「委託研究「Beyond 5G超大容量無線通信を支える空間多重光ネットワーク?ノード技術の研究開発(JPJ012368C00201、JPJ012368C07801)」(代表研究者:香川大学)に基づいて実施されました。
-------------------------------------------------------------------------------------------------
報道発表の詳細
?神野正彦教授が代表を務める、香川大学、KDDI総合研究所、NEC、santec、古河電工からなる産学連携の研究チーム(PHUJINプロジェクト)は、大規模な空間多重光ネットワークの実現に必要な基盤技術(光スイッチ技術、光配線技術、光増幅技術、光ノード技術、光ネットワーク設計?管理技術)の確立と、それらを用いた次世代の光ノード装置、空間クロスコネクト装置の構築に成功しました。さらに、開発技術を統合することで、1,000 km級の大規模な空間多重光ネットワークの実証実験に世界で初めて成功しました。空間多重光ネットワークは、現在の波長多重ネットワークが波長単位の細かい粒度でスイッチングするのとは異なり、低損失なコア選択スイッチを用いてMCF内のコア単位の粗い粒度でスイッチングすることで、① 1ビット当たりの転送コストの削減、② 伝送可能距離の延伸、③ 光ノード装置内の光ファイバ配線数の削減、が可能になると期待されます。
?実施した空間多重光ネットワークの実証実験は次の2つです。
(1)?長距離空間多重光ネットワークテストベッド:?空間多重光ネットワークにおいて、FIFO[デバイスなしの光増幅器を用いたMCF伝送システムは、従来の単一コア光増幅器およびFIFOデバイスを使用したMCF伝送システムと比較すると、余分な損失を引き起こすFIFOデバイスを削減することで光信号の品質向上が可能となります。これにより、より多くのデータをより遠くまで効率的に送信することが可能になります。さらに、柔軟な経路切り替えを可能とするMCF対応の光ノードとして、低損失な空間クロスコネクト装置を導入することで、コストを削減しつつ伝送距離を更に延ばすことができます。今回、コア選択スイッチを用いた空間クロスコネクト装置とFIFOレス4コアファイバ増幅器、4コアファイバ伝送路からなる周回系長距離光ネットワーク実証実験系を構築することで、1,600 kmの長距離にわたる大規模な空間多重光ネットワークが実現可能であることを初めて実証しました。
(2)?マルチドメイン空間多重光ネットワークテストベッド(図1):?MCFの設計?製造技術の進展に伴い、今後、コア数の異なるMCFで構築された複数の空間多重光ネットワークドメイン(領域)が混在すると想定されます。今回、4コアファイバネットワークと16コアファイバネットワークを、コア選択スイッチからなる空間ゲートウェイ装置を介して相互接続し、大規模なマルチドメイン空間多重光ネットワークにおいても、空間チャネルの設立と切り替えが高品質に実施可能であることを初めて実証しました。4コアファイバネットワークドメインは、4コアファイバリンクとFIFOレス4コアファイバ増幅器から、16コアファイバネットワークドメインは、19コアファイバリンクとクラッド励起19コアファイバ増幅器(16コアのみ使用)から、それぞれ構成されています。
PHUJINプロジェクト:https://phujin-project.jp
(a) テストベッドのネットワーク構成
(b) テストベッドの全景
図1 マルチドメイン空間多重光ネットワークテストベッド