小倉卓浩さん(医学部医学科4年生)の医学部薬理学での研究成果が、第29回国際高血圧学会でYoung Investigator Silver Awardを受賞しました。さらに、インパクトファクターが高い国際医学誌Hypertension Research誌にも掲載されることが決定いたしました。
つきましては、ぜひ取材くださいますようよろしくお願いいたします。
日本人の3人に1人が罹患している国民病である高血圧症は、脳卒中?心不全?腎臓病などを発症する原因として最も重要とされています。しかし、ほとんどの高血圧症は「本態性高血圧症」と呼ばれ、発症メカニズムが明らかになっていませんでした。今回、香川大学医学部 薬理学(西山 成 教授)所属の医学部医学科4年生の小倉さんは、本態性高血圧症のモデルである自然発症高血圧ラット(SHR)を用いた研究をデューク-シンガポール国立大学(Duke-NUS)と共同で実施し、腎臓-皮膚連関の観点から新たな高血圧の発症機序を発見しました。その研究成果は第29回国際高血圧学会で発表されましたが、非常に高い評価を受け、Young Investigator Silver Awardが授与されました。また、その研究内容は高血圧国際専門誌であるHypertension Research誌(Impact factor 5.525)にISH 2022 – Fast trackとして掲載されることが決定しました(2023年1月号掲載予定、責任著者:北田研人 助教)。
研究内容:
腎臓は尿を作って体内の電解質や水分量を調節し、血圧をコントロールしています。これまでは腎臓の機能が低下すると高血圧が発症すると考えられてきましたが、その詳細なメカニズムは全く不明でした。一方で皮膚も不感蒸泄(経皮水分蒸散)や発汗を介して体液量に影響を与えることが知られていますが、今回の研究によって、腎臓と皮膚による電解質?体液制御機構が関与する高血圧発症メカニズムが世界で初めて明らかとなりました。
本研究により、自然発症高血圧ラット(SHR)では腎臓の尿を濃縮する能力(水再吸収力)が低下しており、尿量(水排泄量)が増加して体液喪失が生じていることが見出されました。また、この体液喪失を補うために皮膚の電解質蓄積と血管収縮を生じ、皮膚からの水分喪失を抑制して体内の水分量を維持していることが明らかとなりました。さらに、この過程で生じた皮膚血管収縮が血圧を上昇させる要因であることを証明しました。これらの研究結果は、謎とされていた本態性高血圧症の発症機序の解明につながるものとして、世界中から注目されています。
今後の展望
本研究は本態性高血圧のモデル動物である自然発症高血圧ラットSHRにおいて、「腎臓からの水分喪失とそれを補うために生じる皮膚の体液保持が高血圧を発症させる原因である」ことを世界に先駆け新たに提唱したものです。将来的にヒトの本態性高血圧患者においても同様のメカニズムの存在が証明できれば、新しい高血圧の予防?治療法の開発へつながることが期待されます。
苅尾七臣 Hypertension Research誌 編集長より
本研究は国際高血圧学会2022の優秀演題に選ばれ、さらにHypertension ResearchのRapid publicationで発表された大変優れた論文です。その研究を現役の医学部学生が第一著者で発表したことは、大きな驚きであるとともに、まさに素晴らしい快挙であります。香川大学の研究指導体制に加え、御本人と指導された先生の御努力と情熱に敬意を表します。
発表論文
Ogura T, Kitada K, Morisawa N, Fujisawa Y, Kidoguchi S, Nakano D, Kobara H, Masaki T, Titze J, Nishiyama A. Contributions of renal water loss and skin water conservation to blood pressure elevation in spontaneously hypertensive rats. Hypertension Res 2023 Jan; 46(1): 32-39. DOI: 10.1038/s41440-022-01044-6.
(URL:https://www.nature.com/articles/s41440-022-01044-6)
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問い合わせ先
香川大学医学部 薬理学 西山成
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