乾癬は皮膚の慢性炎症性疾患です。香川大学医学部皮膚科学の大日輝記教授は、京都大学との共同研究で実施した複数の研究の網羅的解析の結果より、炎症が皮膚で慢性化する必要十分条件の絞り込みを行いました。その結果、乾癬の病変部の皮膚で発現が4倍以上に上昇する518遺伝子のうち、必要十分条件で表皮細胞が産生する因子を2つに絞りこみました。今後の新たな創薬を期待できます。
乾癬は世界人口の約3%をおかす慢性の皮膚疾患です。免疫のはたらきを抑える抗体を繰り返し注射する治療が効果を上げていますが、注射をやめるとほとんどの患者さんが再発するため終了ができないことと、患者1人あたりの年間の薬剤費が200~400万円にのぼるため保険医療の負荷が大きいことから、安くて安全なあたらしい治療が求められています。大日教授らは疾患モデル動物を用いた過去10年間の研究で、乾癬型皮膚炎における表皮細胞の必要条件を同定し、続いて十分条件を同定しました。今回、これらの研究の網羅的解析結果を元に条件の絞り込みを行い、表皮が必要十分条件で産生する因子を「CXCL2」と「HB-EGF」の2つに絞りました。これらの因子は乾癬に特徴的な炎症のタイプにもかかわりがあり、これらのはたらきをおさえることで新しい治療につながる可能性がある、と大日教授は話しています。
ヒトの乾癬、および疾患モデル動物の皮膚で共通して発現する遺伝子と、乾癬の必要十分条件で表皮細胞が発現する遺伝子のあいだで共通する遺伝子は、血液細胞を皮膚に呼び寄せるCXCL2と、増殖因子のHB-EGFの2つだけだった。
発表論文:
Dainichi et al. Necessary and sufficient factors of keratinocytes in psoriatic dermatitis. Front Immunol 2024
Jan 19; 15: 1326219. DOI: 10.3389/fimmu.2024.1326219
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