香川大学長×理事×副学長スペシャルトーク

君×香大=人間力
君が香川大学とまじわると、どうひろがる?

学部の垣根を越え、理論値と実践知を合わせた
「総合知」を習得させる教育に重きを置いている香川大。
人間力を導き出す仕組みとは???

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写真左 : 山神 眞一(やまがみ しんいち) 副学長(学生支援?広報?特命担当)
写真中 : 上田 夏生(うえだ なつお) 香川大学長
写真右 : 野﨑 武司(のざき たけし) 理事?副学長(教育担当)

文理融合による革新

上田 AIに代表される急速なテクノロジーの発達、グローバル化、SDGsの推進など、変化の激しい現代社会。人口減少に伴う過疎化や人手不足、気候変動に伴う自然災害の増加など、地域社会も多くの課題を抱えており、それらに柔軟に対応し、解決する力が求められています。香川大には全6学部がありますが、近年では文系と理系が融合した学びの場が増えてきました。これは、多くの課題がある中で、それをどう解決するかに文系も理系も関係ないという考えから始まったものです。
野﨑 昔は学部が違うと、別世界の人のように感じられていましたが、それが変わってきましたね。多様な人が集まり課題を共有することで、新たなイノベーションが起こっています。たとえば、“香川県独立の父”と呼ばれる中野武営にまつわる資料をデジタル化して保存?公開しようとする『デジタルアーカイブ事業』は、マルチメディア情報処理を専門とする理系の先生と、歴史経済を研究している文系の先生が共同で行っている事業。学生も関わっており、とても面白いものになっていますよ。
上田 これまでにはなかった動きが生まれていますが、教育体制においてはどのような特徴がありますか。
野﨑 学生がそれぞれの専門性を深化させられる多彩なプログラムが用意されているのはもちろん、1年次から特色ある『华人策略论坛,华人策略网站科目』が用意されているのが大きな特徴だと思います。とくに『はじめて学ぶDRI』という授業には、力を入れています。
上田 DRI教育は香川大の教育の柱とも言えますよね。
野﨑 D=デザイン思考、R=リスクマネジメント、I=インフォマティクスの頭文字で、香川大が独自に打ち出したものです。これからの予測不能な時代を生き抜くため、自分の目線で諸課題をしっかりと整理し、解決に向かって積極的に行動できる人材の育成を目的にしています。
山神 『ネクストプログラム』も、香川大ならではですよね?
野﨑 そうですね。「学部を越えて、自分が興味あることをもっと学びたい」という学生の主体性に応える、全学部生対象の特別教育プログラムになっています。グローバル人材育成、防災士養成など5つのプログラムが用意されており、所属学部の専門性プラスアルファの専門教育が受けられます。

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“人間力” を養う場所が授業以外にも充実

上田 授業以外のところでは、学生たちはどんな活動を行っていますか。
山神 まず学内にはサークルがあります。現在、全学的な公式サークルは70近くあり、加えて各学部が独自に立ち上げているものがあります。サークルでは、他者と協働して団体を運営するためのコミュニケーション能力、他者といっしょに課題を見つけて解決へと導く能力といった、高校生活では得られなかった力がたくさん養われます。広い意味での“人間力”と言えるでしょう。私はキャリア支援センター長もしており、企業の採用担当者と話す機会が多いのですが、「サークル活動で学んだことは、社会に出てからの働きぶりや実生活に非常に活きてくる」と皆さんおっしゃいます。最近では、学生たちの間で「自分たちで新たなサークルを立ち上げたい」という機運が高まっており、もっと支援をしていきたいと考えているところです。
上田 サークルというのは活動内容だけに留まらず、組織の人間関係や運営においても、実に様々なことが学べますね。ほかに『夢チャレンジプロジェクト』という学生支援プロジェクトもありますが、これはどのようなものでしょうか。
山神 地域課題を解決することを目的に、学生が学外で行う魅力的?独創的なプロジェクトを大学が経済的に支援する制度です。「これがやりたくて香川大に入学した」という学生もいるくらい、人気のプロジェクトとなっています。近年ではマスコミに取り上げられることも多く、地域の方々のほうから「困っていることがあるから、相談にのってほしい」と要望がくることが増えてきました。さきほど野﨑理事から説明があった『华人策略论坛,华人策略网站科目』で出会った学生たちが結成した、スタートアップ(新規事業の立ち上げ)のプロジェクトも非常に目立ってきています。
野﨑 『夢チャレンジプロジェクト』は、学部を越えた交流の場になっているのですね。この活動を通して、学生たちにはどのような力が備わってきたと思われますか。
山神 3つの力が備わってきたと思います。まずは、地域にどんどん出ていくことで養われる対人力。そして自分の気持ちを体系的に処理する対自分力。最後に、地域の人と一緒に見つけた課題にどう対処していくかを考える対課題力。まとめると先ほどご紹介した“人間力”ですね。実際に、企業の採用担当者からも香川大生のこれらの力は高く評価されていますし、『夢チャレンジプロジェクト』はDRI教育と同様、香川大の大きな特徴になっていると思います。

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社会への参加意識をもち 地域に貢献してほしい

上田 これまで大学というのは、それぞれの学部の専門性を学ぶための場という認識でした。しかし今や、困難な時代を生き抜くため、言い換えると社会に出て活躍できる人材になるための力を養う場所になってきたと感じます。もはや学部は関係ないのです。そんな力を養うきっかけを用意するのが、大学の使命。授業はもちろん、サークルやプロジェクトなどの経験すべてが“人間力”を養うのに役立つと私は考えています。
山神 私も同感です。 昨年創造工学部の授業科目「ロジカル思考演習」の担当教員チームが『心理的安全性AWARD2023』で最高位を受賞したことが話題になりました。
野﨑 心理的安全性とは、もともとはビジネス界で注目された考え方。この授業では、ディスカッションの場で自分の意見を表現することへのプレッシャーをなくし、みんなが言いたいことを言い合える環境を作るためのテクニックを学びます。つまり、社会に出てから必ず役立つ“人間力”が身につくのです。授業を見学していると、学生全員が手を挙げて発言していて、驚きました。今のところは創造工学部の専門教育の授業ですが、今後は体制を整えて全学的に広げたいと考えています。
上田 とてもおもしろい取り組みで、私も期待しています。では最後に、香川大生にどんな人になってほしいか、皆さんの意見を伺いましょう。まずは私から。性格が控えめとか、苦手なことがあるだとか、そういうものも含めて自分自身を肯定的に捉え、自分のやり方で地域社会の一員として諸課題に取り組む人になってほしいと願っています。
野﨑 解決が困難なものを目前に、「大変やなあ」と見ているだけでなく、一歩前に出て「何とかしよう」と言える人になってほしいです。
山神 人を応援し、応援される人でしょうか。つまりは“人間力”が高い人ですね。

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